「成果の出る会議」とは?ー会議の目的が達成されれば、それでいいのか
前回は、情報共有が目的の会議には、「成果」という概念がない、というお話をしました。今回は、会議の成果とは何か、それをどうやって出すのか?について考えていきたいと思います。
会議の目的は4つある
みなさんの会社では、どんな名前の会議が開かれているでしょうか。「月度定例会」「進捗報告会」のように、明らかに情報共有目的の会議だとわかるもの以外に、「課題検討会」「○○対策会議」のように、意見を出し合うことを目的としていそうな会議、あるいは「営業ミーティング」「部長会議」のように、名前だけでは目的のわからない会議もあるかもしれません。しかし、多くの場合、会議の目的はおよそ4つに分けられます。
- 情報を共有する
- アイディアを出し合う
- 案を検討する
- 結論を出す
「1.情報を共有する」は言うまでもありませんね。
「2.アイディアを出し合う」は、みんなで集まってアイディアを出し合うことで、多面的な見方が生まれ、1人では考えつかない案が醸成されることが期待されます。
「3.案を検討する」は、主張を述べ合うものです。「2.アイディアを出し合う」と異なるのは、ある基準に沿って判断するという視点が入ることです。
例えば、先月発売したばかりの新製品の売上が目標値を下回っていて、その原因を探ると、ちょうど同時期に発売された競合他社の新製品と比べて10%ほど価格が高い、ということがわかったとします。
売上を目標値に近づけるためにはどうしたらいいか、というテーマで「2.アイディアを出し合う」とした場合は「競合他社に合わせてうちも価格を下げよう」「比較広告を打ってうちの製品のメリットを訴求しよう」「買い替えの人向けの下取りキャンペーンをしよう」など、様々なアイディアが出されると思います。
しかし「3.案を検討する」という場合には、例えば「どの案を採用して実行に移していくか」という、より現実的な見地から考える必要があります。その時には、様々な都合によって、「2.アイディアを出し合う」で出たアイディアの一部は採用できないものになるかもしれません。
「4.結論を出す」は、通常「2.アイディアを出し合う」や「3.案を検討する」のステップを経て行われます。
上の例で言えば、「来月から競合他社と同じ価格まで引き下げ、下取りキャンペーンも同時に始めよう。広告を打つには販促費の予算が厳しいので、製品の比較表を作って、店舗で営業員に説明させよう」という結論が出せたとします。
会社の会議であれば、特定の意思決定者(部長など)の承認、という手続きをとるかもしれませんが、実際には会議の参加者全員が何らかの形でこのプロセスに加わり、結論を左右しています。つまり、「集団での意思決定」が行われたことになります。
成果の出る会議のためには、+1ステップが必要
会議の4つの目的は、そのまま成果に結びつくまでのステップとして考えることができます。
しかし、4つの目的を果たせば自動的に成果が出るのでしょうか?
実は、「4.結論を出す」で「集団での意思決定」を行なったと書きましたが、みんなで決めた結論というのは、「好きに解釈できる」ものでもあります。
先ほどの例で言えば、この会議に参加しているA課長は「下取りキャンペーンを始めるんだな。じゃあ、うちの課では、まず買い替えを検討している法人顧客をリストアップしておこう」と考えるかもしれません。
ところが、B課長は「下取りキャンペーンは、店舗で大きく宣伝する方が効率がいいだろう。うちの課の、店舗に出ている営業員に簡単なチラシを作っておいてもらおう」と考えたとします。
そしてC課長は「下取りキャンペーンか、まあやれることは色々あるかもしれないが、具体的に上から指示がきてからにしたいなあ。今月は大口得意先との契約交渉で、それどころじゃないんだよ」と考えたとします。
会議で結論が出たところで、C課長のように何もしなければ何も起きません。また、A課長やB課長のように、自分の思ったことだけをやるというのでは、出た結論に対して部分的にしか応えていないことになります。法人顧客のリストアップはA課長のところだけで必要なことでしょうか?B課長のいう店舗向けのチラシは、店舗だけでしか使えないのでしょうか?
さらに、A課長やB課長も、製品の比較表の話はしておらず、「誰かが作ってくれるかな」と思っているか、もしくは、あまり興味がなくて意識にとどまっていない、ということもありえます。
「結論を過不足なく実行できる形にする」ことが大事
このように、「4.結論を出す」までのステップで終わりにしてしまうと、個人個人が好きに解釈できる余地を残していることになるのです。例えばカルロス・ゴーン氏が来る以前の日産自動車について、当時副社長だった小枝至氏のこんな発言があります。
1990年代の日産自動車について語っていた小枝至は、会議の結論が軽視されていた状況を次のように話す。
「昔の会議では、意思決定が曖昧でした。会議で決まったことが、実行者に伝わると『決める人は決める人。実行する人は自分。決まったことを実行するかどうかを決めるのは自分。』という考え方が現れます。会議で決めるのは勝手だけれども、やるのは自分だからというわけです」
『日産 驚異の会議 改革の10年が産み落としたノウハウ』漆原次郎著 東洋経済新報社(2012年)より
ここでも、個人の解釈で実行されるかどうかが決まっていた、ということがあるわけですね。
ここで元々のテーマである「成果の出る会議」に立ち戻りましょう。もうおわかりかと思いますが、会議の成果というのは、「みんなで決めた結論に対して、過不足なく実行が伴う」ことなのです。
アイディアを出し合い、案を検討しても、実行が伴わなければ、「1.情報を共有する」のステップまでで行われたことと、あまり変わりはありません。集まって会議した結果、そういう結論が出たよ、というだけでおしまいです。
会議の成果である「過不足なく実行が伴う」ためには、「個人が好きに解釈できる余地をなるべく残さない」状態にすることが大事です。そこで「4.結論を出す」の後にもう1ステップ、「5.誰が何をいつまでにするか宣言する」を付け加えたいと思います。
「誰が何をいつまでに」の書き方
例えば、こんな風に決めて、その場で議長がはっきりと宣言し、議事録にも書き残します。
- 全部の課で、担当する法人顧客に対しては、買い替えを検討しているかどうか、2週間後の11/xxまでに情報収集し、リストアップすること。
- B課長は4日後の11/xxまでにチラシを完成させ、全部の課に電子で配布すること。各課では、チラシを法人顧客訪問時に持参するようにアナウンスすること。
- C課長は製品比較表の項目をまず検討して、明後日11/xxまでにリストアップすること。1週間後の11/xxまでに、検討項目を元に比較表を完成させること。C課は余力が足りないとのことなので、製品の詳細情報提供を、A課長が明日11/xxまでに、開発担当のD部長へ依頼して協力してもらうようにすること。
いやいや、そんなの当たり前でしょ、と思われる方もいるかもしれません。
しかし、この「5.誰が何をいつまでにするか宣言する」というステップでは、結論を決めるまでの段階では生じない「実行責任」というものが出てきます。
「言うとやるとは大違い」という言い回しがありますが、誰しも自分の負担を軽くしたいと思っているところへ「誰々はいつまでにこれをやってください」という具体的な宣言を行うのは、それを行う議長やファシリテーター役にとっては少し勇気がいることです。
だからと言って、「自分はこれをやります」という参加者の善意だけに任せていては、今まで見てきた通り、成果に結びつきません。
そこで、あえてこのようなステップを明示的に設けることで、会議の結論が無理なく実行に移せるようにしたいと考えました。いかがでしょうか?
次回は、「よくある会議とその良し悪し」を具体的に見ていきたいと思います。
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